2025.7.7

学生支援!車両製作への技術協力

学生支援!車両製作への技術協力

ハブ、デフケース、アップライトの製作を通じて、未来のエンジニアを応援

今回ご紹介するのは、大学生が主体となって車両を設計・製作し、世界中の大学と競い合う「学生フォーミュラ」活動への支援事例です。私たちは、A7075-T6材を使用したハブ・デフケース・アップライトの製作に協力させていただきました。これは単なる部品加工ではなく、未来のエンジニアたちを応援する、ものづくりの原点に立ち返る貴重な機会でもありました。

学生フォーミュラとは

学生フォーミュラとは、大学生たちが自ら設計・開発・製作・検証を行いフォーミュラカーをつくりあげる競技型プロジェクトです。この活動はアメリカ・ヨーロッパ・オセアニアなど世界中で行われており、完成度や設計思想、走行性能、安全性など様々な観点で競い合う、まさに「実践型の学びの場」となっています。

図面だけではなく、手を動かし、自らのアイデアを形にする。試行錯誤を繰り返しながら技術と創造力を磨いていくこの経験は、将来、技術者として歩む上でかけがえのない糧になるはずです。

“ものづくり”を支援する想い

私自身、大学時代にこの学生フォーミュラに携わっていました。当時、ただ図面を描くだけでなく、自分たちで考え、設計し、実際に加工や組立を行い、走らせる。そうした“ものづくりの一連のプロセス”に触れることができたこの経験が、現在の仕事観にも大きく影響しています。

しかし、現代の教育現場では、理系の大学を卒業しても「実際に何かを作ったことがない」という学生も少なくありません。ものがどのように作られているかを実感できる場が減ってきていることは、ものづくりに携わる立場として危惧しています。

本来、ものづくりは「考える」「創る」「形になる」までの過程こそが最も面白く、感動的な部分です。その魅力を学生たちが体験し、理解し、将来の技術者としての基盤を築いてもらうためにも、こうした活動を支援していきたいと考えています。

教室の中だけでは育たない「実践的な技術力」と「創造的な思考」。それを育てる一助として、私たちが得意とする精密加工の力で貢献したいという思いで、今回の協力をさせていただきました。

製作対応した部品と加工の工夫

【ハブ(HUB)】

車両のホイールやブレーキが取り付けられる重要な構造部品です。スタッドボルトが打ち込まれ、タイヤからの大きな荷重を支えるため、各部の肉厚設計に配慮が必要です。さらに、走行時の振動を抑えるため、回転体としての振れ精度も非常に重要となります。加工には旋盤とマシニングの両方を駆使し、高精度かつ剛性のある仕上がりを目指しました。

【デフケース(Differential Case)】

エンジンやモーターからの駆動力を左右のタイヤへ分配するデファレンシャルギアのケーシング部分です。深くて大きな掘り込み形状であるため、内部応力の影響で加工中に歪みが出やすいという特徴があります。そのため、材料の逃げや加工順序に細心の注意を払いながら、変形を最小限に抑える工程設計を行いました。 アップライト(Upright)_ハブと足回りを支える部品です。アルミブロック材からの削り出しとなるため、部品重量に対して切削除去量が非常に多く、切子も大量に発生します。こちらもデフケース同様、加工の順序を工夫し、ひずみや残留応力を抑えるよう製作しました。完成後はきれいなアルミの外観と高い寸法精度を兼ね備えた仕上がりとなりました

【アップライト(Upright)】

ハブと足回りを支える部品です。アルミブロック材からの削り出しとなるため、部品重量に対して切削除去量が非常に多く、切子も大量に発生します。こちらもデフケース同様、加工の順序を工夫し、ひずみや残留応力を抑えるよう製作しました。完成後はきれいなアルミの外観と高い寸法精度を兼ね備えた仕上がりとなりました

まとめ ― 未来の技術者へエールを込めて

今回の支援は、単なる部品加工ではなく、「ものづくりの魅力を伝える」という意味でも大変意義のある取り組みでした。私たちが加工した部品が、学生たちの車両の一部として命を吹き込まれ、走り出すこと。その過程に関われたことは、非常に嬉しく誇りに思います。

また、普段はお客様からのご依頼に応じて、産業用や設備向けの部品などを製作するのが私たちの主な仕事です。そうした日常業務ではなかなか見えにくい「自分たちがつくったものが、誰かの夢や挑戦に直結している」姿を、今回のような学生支援を通じて実感できるいい機会にもなると思っています。

「自分の手で作ったものが誰かの役に立っている」ことを目にすることは、技術者にとって大きなモチベーションとなります。ものづくりに誇りを持ち続けるためにも、こうした経験が社内に広がることを願っています。

今後も、次世代の技術者たちの挑戦を応援しながら、ものづくりの現場からできる支援を真摯に続けていきます。

車両の写真
大会での集合写真