一品一様への対応力
単品・小ロットの積み重ねが技術力に

私たちのものづくりの現場では、いわゆる「大量生産品」はほとんどありません。
むしろ、一品一様、単品や小ロットといった、よりオーダーメイド性の高い仕事が日常です。
お客様からのご依頼の多くは、特注装置やカスタム機器向けの部品。
図面を見てみると、初めて見る形状であることも少なくなく、 「類似しているけれど長さが微妙に違う」「一部だけ形状変更されている」といった変化に富んだご依頼がほとんどです。
こうした仕事を日々こなしていく中で蓄積されるのが、
「こういう形状のときは、この段取りが効率的だ」「この材質なら、この工具選定が良い」
といった加工の引き出しの多さです。
これこそが、私たちの現場における一番の強みだと考えています。

[ CASE ]

包装機械向け部品
ワークプッシャーとヒーター

ご紹介するのは、包装機械向けに製作した2種類の部品です。いずれも装置の中で非常に重要な役割を担うパーツでありながら、設計変更やワーク仕様に合わせて都度調整されるため、毎回異なる仕様となります。

ワークプッシャー(材質:A5083)

この部品は、コンベアで流れてくるワーク(製品)を押して、整列させたり、次工程に送り出すための押し出しパーツです。材質には耐食性と強度のバランスに優れたアルミ合金「A5083」を使用しています。

一見、似たような形状に見えても、実際には押し出す対象のワーク形状・サイズに合わせて切り欠きの位置や大きさ、押し面の角度などが毎回異なります。形状が少し違うだけで、治具や固定方法、加工手順に影響が出るため、柔軟に段取りを考えながら対応しています。

このような細かなカスタマイズが繰り返される現場では、単なる技術だけでなく、「読み取る力」や「段取りの工夫」が問われます。

ヒーター(材質:C1100・タフピッチ銅)

もうひとつの部品は、フィルム包装における“熱接合”工程で使用されるヒーター部品です。使用材質は高い熱伝導性を持つC1100(タフピッチ銅)。銅は柔らかく切削しやすい反面、粘り気があり、加工中の熱によって変形やバリが発生しやすいという特性を持っています。

このヒーター部品は加熱され、薄いフィルムに直接接触して圧着を行うため、フィルムを傷つけないよう接触面はすべて丸角(R仕上げ)で構成。さらに、上面には対象となるワーク形状に合わせた大きなR形状(円弧)が加工されており、その中心点や半径の設計には高度なノウハウが求められます。

加工時には、切れの良い適切な工具選定、熱の発生を抑える加工条件、バリ処理の工夫などが欠かせません。また、熱膨張や加工後の反りを最小限に抑えるための段取りや加工順序の工夫も重要です。素材の特性を踏まえた繊細な調整と高精度な加工技術が求められる代表的な仕事のひとつといえるでしょう。

一つひとつの違いに、確かな技術で応える

単品の金属加工では、見た目にはわからないような微細な寸法差や、使用環境に合わせた設計変更が常に伴います。そのたびに加工条件や段取り、治具の設計まで一から考え直すことも珍しくありません。
しかしこの積み重ねが、「どんな図面が来ても、まず対応の糸口を考えられ形にできる」という柔軟さと対応力へとつながっています。
一品一様であるからこそ、型にはまらない創造的な加工技術が磨かれていく。私たちはそう考えています。